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146 第135話

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椎名がネットカフェの個室に入ったと報告が入って1時間半。
彼に張り付く現場捜査員から変わった様子などの報告は未だない。
「そういやいつ頃からやったけ…。週に一回はネットカフェ。これが椎名のルーティンになったんは。」
ホットコーヒーに口をつける
息をつく
マウスの音
しばし無音
「ワシをすっ飛ばして頭越しに直でやり取りする警察の誰かさんもさることながら、身近で世話してきたワシに悟られんように特高とコンタクトとっとった椎名にもがっくり来ました。」59
「あいつがワシをすっ飛ばして、特高とコンタクトとるとしたらこのネットカフェを利用するタイミングが一番可能性が高い…。」
富樫はとっさにマイクを口に当てる。
「富樫から椎名班。」
「こちら椎名班。」
「椎名は個室に入ったとの報告であるが、そこには隣部屋とかあるのか?」
「はい。個室は6室。椎名が入る部屋は角部屋でして、隣部屋は一室あります。」
「その部屋は使用中か。」
「え?」
「その部屋が使用中ならそこの利用者調べてくれ。」
「確認して報告します。」
ドアを閉じる音
部屋に岡田が戻ってきた。
「いやぁ凄いわ…。」
「どうしたんですか。」
「これ見てみ。」
岡田は携帯の画面を富樫に見せる。
「なんですかこの残念な頭のおっさん。」
「よく見てみろ。」
「え?よく見るんですか?」
「うん。」
「凄まじい散らかしっぷりですね。こんな具合になるくらいやったら、ワシならいっそ坊主にしますけどね…。なんちゅうかみっともない…。」
富樫は黙った。
「気づいた?」
「はい…。」
「誰かな?」
「…確か…矢高とか言ったような…。」
「そう。その通り。矢高慎吾。マサさん、あなたとは能登署で一緒やったことがあると思う。三好さんも。」
「どうしたんですか、この矢高がなにか?」
「ウチの捜査員がこいつと直接接触するようなことがないように徹底してほしいんやわ。」
「…なんで?」
「いろいろあって言えん。」
「…。」
「もしも偶然接触したとしても、すぐに退け。もちろん公私ともに。」
「教えてください。どうして矢高が。」
「心強い人間からの指示。」
「心強い人間?」
「心配ない。心強い人間がこちらに接触してきた。」
「心強い人間?」
「ああ。」
「誰ですか?」
「それは言えない。」133
「ほら今マサさん、この写真見て矢高やってすぐに分からんかったやろ。」
「いや、あまりにも汚い頭やったんでそっちに目が行ってしまって。」
「プロっぽくないか?」
「あ…。」
「見た瞬間、その汚らしい禿げ散らかした様子で頭の中がいっぱいにさせられる。」
この岡田の言葉に富樫は思わず身をすくめた。
「ヤバい奴やぞ、こいつ。手一杯の今の俺らには対応は無理や。ほやからここは心強い人間の指示の通りにしよう。そいつががっつり対応してくれる。」
「はい。」
「すぐにケントク全員に知らせてくれ。」
「わかりました。」
キーボードの音
富樫はすぐさま県警の公安特課全捜査員対象に矢高の画像を送る。次いで無線で矢高との接触を持たないよう指示を出した。
「仮に電話等で向こうから接触があれば、深入りせず至急ケントク富樫まで報告されたい。以上ケントク。」
「椎名班からケントク。」
「はいこちらケントク。」
「椎名の隣部屋は現在空室です。つい10分前までは利用されていたようです。」
「その部屋調べてくれ。ついでにどんな奴がその部屋に居ったかも。」
「はい。」
「どうしたマサさん。」
「いや椎名の奴いつものネットカフェに居るんですが、よく考えたら、こいつがワシをすっ飛ばして特高の誰かとコンタクトをとるとしたら、このタイミングが一番やと思ったんです。」
「なるほど。」
「個室でセキュアなネット環境。そして施設備え付けのPC。ワシらの監視をかいくぐれる。」
「椎名のPCは遠隔でマサさんが中を見れるが、店の備品は簡単にそんなことできっこないもんな。」
「はい。」
「で、なんで隣部屋を?」
「なんとなく気になりました。」
「どう気になった。」
「今まで我々を欺いて特高と接点をもってきた椎名です。椎名ひとりの考えで奴の周りがまわっとる訳じゃありません。特高の中の誰かが奴を手引き若しくは指南しとる可能性もある。となると裏を読む必要があります。」
「ネットカフェで誰かとコンタクトをとるとしたら、まぁ普通はネット、携帯、SNSとかやな。そいつらを遠慮無く使えるのが椎名にとってネットカフェの良さやしな。」
「だがそこであえて真逆の方法を使うことでワシらの裏をかくとも考えられませんかね。」
「…隣部屋に特高の誰かが居た。」
「もしくはそのエスが居た。」
「椎名がこの店に入る時、いつも。」
岡田が言うように、もしも椎名がこのネットカフェを利用し始めた当初から、いつも特高が独自に椎名と接触していたとしよう。石川の公安特課の極秘任務である、椎名の行動監視。これが何の意味も持っていなかったことになってしまう。公安特課による監視行動は、特高の本当の意図を公安特課から隠匿するためだけに命じられた任務だったとの意味合いを持ってくる。
「だとしたら何で?何でって話ですよ岡田課長。」
「だよな。」
「椎名班、隣部屋に入りました。」
無線の声が富樫と岡田のモヤモヤとした気持ちを吹き飛ばした。
「怪しいものが無いかひととおり調べてくれんか。」
「了解。」
「ちなみにさっきまでその部屋を使っとった奴は?」
「伊藤拓哉という男です。」
「伊藤拓哉?」
「ちゃんとした店でして、会員証を作る際に本人確認をしてたんです。そのファイルはしっかりデータで保管されていました。いまそちらに免許の写しを送りますので検証をお願いします。」
富樫のパソコンにそれが届いた。
「きたきた。」
マウス音
口ひげを生やし、縁が厚めの眼鏡ををかけている男の写真だった。
「なんかぱっと見やと、中東系のハーフかってぐらいの顔立ちやな。」
「はい。ひげも眼鏡も自然です。」
「単なる男前か…。」
ダブルクリック音
富樫は写真を拡大縮小して、顔の特徴をつかもうとする。
「ケントクから椎名班。」
「はい椎名班。」
「この伊藤の情報は他にはないかどうぞ。」
「椎名と同じく常連です。来店頻度は3週間に1回程度です。使用する部屋はまちまちです。いつも個室というわけではなさそうです。」
「考えすぎか…。」
「それならそれで良いんですが…。」
「一応、この伊藤の照会とっておいて。」
「了解。」
富樫は無線を使って紹介センターに連絡を取りだした。
「こちら椎名班。」
富樫が無線対応中のため、岡田がそれに応えた。
「はいケントク。」
「ひととおり調べたが、特に不審な点はありません。床にはマットのような者が敷かれてますが、めくりあげても何もありません。」
「もう一度椎名の部屋と隣接する壁側を重点的に調べてくれないか。」
「壁側ですか?」
「あぁ何か小さな穴のようなもんとか、何かを受け渡しできそうな隙間とかないかな。」
「穴のようなものは確認できませんでしたが…。」
「念のためや。もう一回頼む。」
「わかりました。」
「課長。」
振り返ると顔を青くした富樫がいた。
「どうした。」
「この免許証、偽造です。」
「え?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「よし、もう一回壁側調べるぞ。」
「もう一回ですか?」
「ああもう一回だ。小さな穴とか隙間みたいなもんがないか見るんや。」
「今度は叩いてみますか。」
「だら。んなことしたら隣に丸わかりやろ。」
一畳半程度の狭い個室の中で立派な体躯の男二人が壁に手を当てて何かを調べる様子は、端から見ると滑稽に映った。
「あ。」
「なんや。」
「穴あるじゃないですか。」
「まじか。」
どれどれとしゃがみ込むとそこにはコンセント口があった。
「確かに穴言うたら穴やな…。」
こう言ってそれに触れると、ガタリと右に少しだけずれた。
「まさか。」
再びコンセント口を動かそうとしたときのことである。
爆発音
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「偽造?」
「はい。該当する番号は別人のものです。」
「と言うことはこの伊藤…。」
「ビンゴかもしれません。」
とっさに岡田はマイクを持つ。
「ケントクから椎名班。」
返事がない。
「ケントクから椎名班。」
「…。」
「ケントクから椎名班。聞こえますか。」
「…。」
コールサイン
「本部から各局。先ほど19時半頃、熨子町付近で爆発音がしたとの報あり。付近のPBは直ちに現地に急行されたい。」
「こちら北署。今、最寄りのPBからPMを派遣した。」
「了解。現場を把握次第本部まで報告されたい。」
「北署了解。」
「え…。」
「ケントクから椎名班。」
「…。」
「ケントクから椎名班!」
「…。」
「ケントクから!」
「課長。例のネットカフェは熨子町です…。」
無線を力なく落とした岡田はその場で崩れ落ちた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「仮に電話等で向こうから接触があれば、深入りせず至急ケントク富樫まで報告されたい。以上ケントク。」
「こんな感じです。矢高さん。」
後部座席に座る男は停止ボタンを押して、それを横に置いた。
そこには縁の厚い眼鏡と、つけ髭のようなものもあった。
「公安特課としては我々のことはノータッチで行くんだな。」
「別の情報部預かりということでしょう。」
「自衛隊か。」
「でしょうね。」
運転席の矢高はルームミラーを確認する。
「問題ないですか?」
「問題ない。尾行については公安特課の方が一枚も二枚も上手だ。」
「ですよね。」
「ただ油断はできない。素人じゃないからな。」
「で、少佐の件どうします?」
「俺と直で連絡を取りたいってやつか。」
「はい。ベネシュ隊長は問題ないって言ってました。」
矢高は返事をしない。
「どうしたんですか?」
「苦手なんだよ。」
「少佐が、ですか?」
「うん。」
「え?でも矢高さん、少佐の面倒を東京で見てたんでしょ。」
「面倒、見てたのかね…俺。」
「違うんですか。」
「なんか逆にこっちが監視されてるような気がしたよ。正直。」
「そうなんですか。」
「ああ。」
「どんな人間の懐の中に入り込むことが出来るあなたにも苦手なものがあると言うわけですか。」
「あの方の場合、むしろこっちが逆に取り込まれそうな気がしてさ…。」
「それが少佐の凄さなんでしょう。」
「まぁな。」
コールサイン
「本部から各局。先ほど19時半頃、熨子町付近で爆発音がしたとの報あり。付近のPBは直ちに現地に急行されたい。」
「こちら北署。今、最寄りのPBからPMを派遣した。」
「了解。現場を把握次第本部まで報告されたい。」
「北署了解。」
後部座席の男は携帯無線機にイヤホンジャックを差し込み、それを耳に装着する。
「自分、公安特課に戻ります。」
「その方が良さそうだな。」
「番号どうします?」
「いいよ。少佐には伝えてくれ。」
「了解。」
車はとあるスーパーマーケットの駐車場に止まった。
「佐々木の始末といい、少佐との連絡役といい優秀だよ君は。」
「ありがとうございます。」
「俺ももう少し若ければなぁ。」
「矢高さんにはトゥマンの目って大事な役割があるじゃないですか。」
にやりと笑った矢高は彼を降ろした。
「もうしばらくだけ陶のハンドリング頼むよ。冴木。」
ルームミラー越しに冴木の姿が消えるのを確認し、彼もまたこの場を後にした。
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146 第135話

オーディオドラマ「五の線3」

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椎名がネットカフェの個室に入ったと報告が入って1時間半。
彼に張り付く現場捜査員から変わった様子などの報告は未だない。
「そういやいつ頃からやったけ…。週に一回はネットカフェ。これが椎名のルーティンになったんは。」
ホットコーヒーに口をつける
息をつく
マウスの音
しばし無音
「ワシをすっ飛ばして頭越しに直でやり取りする警察の誰かさんもさることながら、身近で世話してきたワシに悟られんように特高とコンタクトとっとった椎名にもがっくり来ました。」59
「あいつがワシをすっ飛ばして、特高とコンタクトとるとしたらこのネットカフェを利用するタイミングが一番可能性が高い…。」
富樫はとっさにマイクを口に当てる。
「富樫から椎名班。」
「こちら椎名班。」
「椎名は個室に入ったとの報告であるが、そこには隣部屋とかあるのか?」
「はい。個室は6室。椎名が入る部屋は角部屋でして、隣部屋は一室あります。」
「その部屋は使用中か。」
「え?」
「その部屋が使用中ならそこの利用者調べてくれ。」
「確認して報告します。」
ドアを閉じる音
部屋に岡田が戻ってきた。
「いやぁ凄いわ…。」
「どうしたんですか。」
「これ見てみ。」
岡田は携帯の画面を富樫に見せる。
「なんですかこの残念な頭のおっさん。」
「よく見てみろ。」
「え?よく見るんですか?」
「うん。」
「凄まじい散らかしっぷりですね。こんな具合になるくらいやったら、ワシならいっそ坊主にしますけどね…。なんちゅうかみっともない…。」
富樫は黙った。
「気づいた?」
「はい…。」
「誰かな?」
「…確か…矢高とか言ったような…。」
「そう。その通り。矢高慎吾。マサさん、あなたとは能登署で一緒やったことがあると思う。三好さんも。」
「どうしたんですか、この矢高がなにか?」
「ウチの捜査員がこいつと直接接触するようなことがないように徹底してほしいんやわ。」
「…なんで?」
「いろいろあって言えん。」
「…。」
「もしも偶然接触したとしても、すぐに退け。もちろん公私ともに。」
「教えてください。どうして矢高が。」
「心強い人間からの指示。」
「心強い人間?」
「心配ない。心強い人間がこちらに接触してきた。」
「心強い人間?」
「ああ。」
「誰ですか?」
「それは言えない。」133
「ほら今マサさん、この写真見て矢高やってすぐに分からんかったやろ。」
「いや、あまりにも汚い頭やったんでそっちに目が行ってしまって。」
「プロっぽくないか?」
「あ…。」
「見た瞬間、その汚らしい禿げ散らかした様子で頭の中がいっぱいにさせられる。」
この岡田の言葉に富樫は思わず身をすくめた。
「ヤバい奴やぞ、こいつ。手一杯の今の俺らには対応は無理や。ほやからここは心強い人間の指示の通りにしよう。そいつががっつり対応してくれる。」
「はい。」
「すぐにケントク全員に知らせてくれ。」
「わかりました。」
キーボードの音
富樫はすぐさま県警の公安特課全捜査員対象に矢高の画像を送る。次いで無線で矢高との接触を持たないよう指示を出した。
「仮に電話等で向こうから接触があれば、深入りせず至急ケントク富樫まで報告されたい。以上ケントク。」
「椎名班からケントク。」
「はいこちらケントク。」
「椎名の隣部屋は現在空室です。つい10分前までは利用されていたようです。」
「その部屋調べてくれ。ついでにどんな奴がその部屋に居ったかも。」
「はい。」
「どうしたマサさん。」
「いや椎名の奴いつものネットカフェに居るんですが、よく考えたら、こいつがワシをすっ飛ばして特高の誰かとコンタクトをとるとしたら、このタイミングが一番やと思ったんです。」
「なるほど。」
「個室でセキュアなネット環境。そして施設備え付けのPC。ワシらの監視をかいくぐれる。」
「椎名のPCは遠隔でマサさんが中を見れるが、店の備品は簡単にそんなことできっこないもんな。」
「はい。」
「で、なんで隣部屋を?」
「なんとなく気になりました。」
「どう気になった。」
「今まで我々を欺いて特高と接点をもってきた椎名です。椎名ひとりの考えで奴の周りがまわっとる訳じゃありません。特高の中の誰かが奴を手引き若しくは指南しとる可能性もある。となると裏を読む必要があります。」
「ネットカフェで誰かとコンタクトをとるとしたら、まぁ普通はネット、携帯、SNSとかやな。そいつらを遠慮無く使えるのが椎名にとってネットカフェの良さやしな。」
「だがそこであえて真逆の方法を使うことでワシらの裏をかくとも考えられませんかね。」
「…隣部屋に特高の誰かが居た。」
「もしくはそのエスが居た。」
「椎名がこの店に入る時、いつも。」
岡田が言うように、もしも椎名がこのネットカフェを利用し始めた当初から、いつも特高が独自に椎名と接触していたとしよう。石川の公安特課の極秘任務である、椎名の行動監視。これが何の意味も持っていなかったことになってしまう。公安特課による監視行動は、特高の本当の意図を公安特課から隠匿するためだけに命じられた任務だったとの意味合いを持ってくる。
「だとしたら何で?何でって話ですよ岡田課長。」
「だよな。」
「椎名班、隣部屋に入りました。」
無線の声が富樫と岡田のモヤモヤとした気持ちを吹き飛ばした。
「怪しいものが無いかひととおり調べてくれんか。」
「了解。」
「ちなみにさっきまでその部屋を使っとった奴は?」
「伊藤拓哉という男です。」
「伊藤拓哉?」
「ちゃんとした店でして、会員証を作る際に本人確認をしてたんです。そのファイルはしっかりデータで保管されていました。いまそちらに免許の写しを送りますので検証をお願いします。」
富樫のパソコンにそれが届いた。
「きたきた。」
マウス音
口ひげを生やし、縁が厚めの眼鏡ををかけている男の写真だった。
「なんかぱっと見やと、中東系のハーフかってぐらいの顔立ちやな。」
「はい。ひげも眼鏡も自然です。」
「単なる男前か…。」
ダブルクリック音
富樫は写真を拡大縮小して、顔の特徴をつかもうとする。
「ケントクから椎名班。」
「はい椎名班。」
「この伊藤の情報は他にはないかどうぞ。」
「椎名と同じく常連です。来店頻度は3週間に1回程度です。使用する部屋はまちまちです。いつも個室というわけではなさそうです。」
「考えすぎか…。」
「それならそれで良いんですが…。」
「一応、この伊藤の照会とっておいて。」
「了解。」
富樫は無線を使って紹介センターに連絡を取りだした。
「こちら椎名班。」
富樫が無線対応中のため、岡田がそれに応えた。
「はいケントク。」
「ひととおり調べたが、特に不審な点はありません。床にはマットのような者が敷かれてますが、めくりあげても何もありません。」
「もう一度椎名の部屋と隣接する壁側を重点的に調べてくれないか。」
「壁側ですか?」
「あぁ何か小さな穴のようなもんとか、何かを受け渡しできそうな隙間とかないかな。」
「穴のようなものは確認できませんでしたが…。」
「念のためや。もう一回頼む。」
「わかりました。」
「課長。」
振り返ると顔を青くした富樫がいた。
「どうした。」
「この免許証、偽造です。」
「え?」
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「よし、もう一回壁側調べるぞ。」
「もう一回ですか?」
「ああもう一回だ。小さな穴とか隙間みたいなもんがないか見るんや。」
「今度は叩いてみますか。」
「だら。んなことしたら隣に丸わかりやろ。」
一畳半程度の狭い個室の中で立派な体躯の男二人が壁に手を当てて何かを調べる様子は、端から見ると滑稽に映った。
「あ。」
「なんや。」
「穴あるじゃないですか。」
「まじか。」
どれどれとしゃがみ込むとそこにはコンセント口があった。
「確かに穴言うたら穴やな…。」
こう言ってそれに触れると、ガタリと右に少しだけずれた。
「まさか。」
再びコンセント口を動かそうとしたときのことである。
爆発音
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「偽造?」
「はい。該当する番号は別人のものです。」
「と言うことはこの伊藤…。」
「ビンゴかもしれません。」
とっさに岡田はマイクを持つ。
「ケントクから椎名班。」
返事がない。
「ケントクから椎名班。」
「…。」
「ケントクから椎名班。聞こえますか。」
「…。」
コールサイン
「本部から各局。先ほど19時半頃、熨子町付近で爆発音がしたとの報あり。付近のPBは直ちに現地に急行されたい。」
「こちら北署。今、最寄りのPBからPMを派遣した。」
「了解。現場を把握次第本部まで報告されたい。」
「北署了解。」
「え…。」
「ケントクから椎名班。」
「…。」
「ケントクから椎名班!」
「…。」
「ケントクから!」
「課長。例のネットカフェは熨子町です…。」
無線を力なく落とした岡田はその場で崩れ落ちた。
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「仮に電話等で向こうから接触があれば、深入りせず至急ケントク富樫まで報告されたい。以上ケントク。」
「こんな感じです。矢高さん。」
後部座席に座る男は停止ボタンを押して、それを横に置いた。
そこには縁の厚い眼鏡と、つけ髭のようなものもあった。
「公安特課としては我々のことはノータッチで行くんだな。」
「別の情報部預かりということでしょう。」
「自衛隊か。」
「でしょうね。」
運転席の矢高はルームミラーを確認する。
「問題ないですか?」
「問題ない。尾行については公安特課の方が一枚も二枚も上手だ。」
「ですよね。」
「ただ油断はできない。素人じゃないからな。」
「で、少佐の件どうします?」
「俺と直で連絡を取りたいってやつか。」
「はい。ベネシュ隊長は問題ないって言ってました。」
矢高は返事をしない。
「どうしたんですか?」
「苦手なんだよ。」
「少佐が、ですか?」
「うん。」
「え?でも矢高さん、少佐の面倒を東京で見てたんでしょ。」
「面倒、見てたのかね…俺。」
「違うんですか。」
「なんか逆にこっちが監視されてるような気がしたよ。正直。」
「そうなんですか。」
「ああ。」
「どんな人間の懐の中に入り込むことが出来るあなたにも苦手なものがあると言うわけですか。」
「あの方の場合、むしろこっちが逆に取り込まれそうな気がしてさ…。」
「それが少佐の凄さなんでしょう。」
「まぁな。」
コールサイン
「本部から各局。先ほど19時半頃、熨子町付近で爆発音がしたとの報あり。付近のPBは直ちに現地に急行されたい。」
「こちら北署。今、最寄りのPBからPMを派遣した。」
「了解。現場を把握次第本部まで報告されたい。」
「北署了解。」
後部座席の男は携帯無線機にイヤホンジャックを差し込み、それを耳に装着する。
「自分、公安特課に戻ります。」
「その方が良さそうだな。」
「番号どうします?」
「いいよ。少佐には伝えてくれ。」
「了解。」
車はとあるスーパーマーケットの駐車場に止まった。
「佐々木の始末といい、少佐との連絡役といい優秀だよ君は。」
「ありがとうございます。」
「俺ももう少し若ければなぁ。」
「矢高さんにはトゥマンの目って大事な役割があるじゃないですか。」
にやりと笑った矢高は彼を降ろした。
「もうしばらくだけ陶のハンドリング頼むよ。冴木。」
ルームミラー越しに冴木の姿が消えるのを確認し、彼もまたこの場を後にした。
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